5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
最近、取り憑かれてしまった。
「ねーねー、クーラーつけないの?暑くない?」
「……」
無視だ、無視。このおしゃべり君にいちいち返事をしていたらキリがない。そうは思いつつも、無視し続けると露骨に落ち込むので、これはまためんどくさい。
「…電気代節約。扇風機で充分」
「ケチくさいねー」
余計なお世話だこのヤロー。だいたい、幽霊なら気温とか感じないでしょ。
「でも暑いじゃん。熱中症になるよ」
「ユーレイに気温なんてわかるの」
「気温はわかんないけど、どのくらい暑いのかは菜月(なつき)さんの汗の量でわかるよ」
「そんなに目立つの?」
「目立つわけではないけど、俺は常日頃から舐め回すように菜月さんを観察してるから」
…どうしよう、はじめてこの幽霊が怖いと思った。やっぱり除霊とか頼んだ方がいいのかな。
×
何の変哲もない夏の、七月某日。ヤツは突然やって来た。
まだ未成年なのにサークルの飲み会に付き合わされ、泥酔した先輩の介抱などもして、へばりながら空っぽの部屋に帰ってきた夜。
「へー、意外と部屋汚いんだねー」
「っ、ギャーッ!!!」
最初は驚いた。なにせ、不審者かと思って退治しようとしても、触れなかったんだから。
「…俺はミカって言うんだ。海に夏って書いて、海夏(みか)。菜月さん、よろしくね」
最初のコメントを投稿しよう!