私と幽霊の君

1/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 最近、取り憑かれてしまった。 「ねーねー、クーラーつけないの?暑くない?」 「……」  無視だ、無視。このおしゃべり君にいちいち返事をしていたらキリがない。そうは思いつつも、無視し続けると露骨に落ち込むので、これはまためんどくさい。 「…電気代節約。扇風機で充分」 「ケチくさいねー」  余計なお世話だこのヤロー。だいたい、幽霊なら気温とか感じないでしょ。 「でも暑いじゃん。熱中症になるよ」 「ユーレイに気温なんてわかるの」 「気温はわかんないけど、どのくらい暑いのかは菜月(なつき)さんの汗の量でわかるよ」 「そんなに目立つの?」 「目立つわけではないけど、俺は常日頃から舐め回すように菜月さんを観察してるから」  …どうしよう、はじめてこの幽霊が怖いと思った。やっぱり除霊とか頼んだ方がいいのかな。 ×  何の変哲もない夏の、七月某日。ヤツは突然やって来た。  まだ未成年なのにサークルの飲み会に付き合わされ、泥酔した先輩の介抱などもして、へばりながら空っぽの部屋に帰ってきた夜。 「へー、意外と部屋汚いんだねー」 「っ、ギャーッ!!!」  最初は驚いた。なにせ、不審者かと思って退治しようとしても、触れなかったんだから。 「…俺はミカって言うんだ。海に夏って書いて、海夏(みか)。菜月さん、よろしくね」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!