【4】

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 そして、今日、拓馬はその盾の力を発動した。それだけせっぱつまっていたということだ。  女装をして、正式なパーティーに出向く。ありえない頼みを玲がきいたのは、これまでの恩を返すのは今だとわかったからだ。普通なら、いくらなんでも断り切るだろうところを、腹を括って身を投げ出した。  それなのに……。 (なんてことをしたんだ……)  感謝してもし切れない拓馬や『SHINODA』に対して、恩を仇で返すどころか、サラ金並みの高金利、それ以上のプレミアをつけて返してしまった。  あのネックレスは、『SHINODA』にとって社運を賭けた大切な品だ。付けられた値段以上の大きな価値がある。 「それを、俺は……」  拓馬を待つうちに疲れと酔いで何度か睡魔が襲ってきた。だが、心に重い事実が玲を苛み、とても眠ることはできなかった。わずかにうつらうつらと船をこいでは、事実と悪夢が一体となって襲いかかってくる。  その上……。玲は両手で顔を覆った。  本当は『サンドリヨンの微笑』のことだけ心配するべきなのだ。頭ではそう思う。  思うのに、心はもう一つの悲しみに絶望を抱いていた。  唇に指を当てる。  慣れない口づけに翻弄されながら、アルコールのせいだけではない陶酔を玲は味わった。周防に触れられて、自分の中の何かが彼に応えたがっているのを感じた。 (でも、俺が男だって知ったら……)  きっと彼は笑うだろう。  エレベーターホールで玲を避けるように通り過ぎた人々のように。 『なあに、あれ……』  見知らぬ人の嘲笑が耳から離れなかった。  悲しい気持ちと不安とに胸を押しつぶされ、眠れないまま夜明けを迎える。墨色だった空が薄い紫色に変わる頃、ようやく玄関のカギが静かにまわる音を聞いた。
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