【5】

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「いやあ、山田商事の専務がどうしても親父に挨拶するって聞かなくてさ……」  リビングに入ってきた拓馬は、そこの玲がいるのを見て驚いたようだが、スマホの着信記録に気付くと「悪い、悪い」と頭を掻いて隣に腰を下ろした。 「昨夜は山田社長とうちに行って、遅くなったからそのまま泊まったんだ。連絡しなくて悪かったな」  玲は黙って首を振った。 「で、どうしたんだ? 何かあったのか?」  言葉を見つけられずに、すがるようにじっと拓馬を見た。 「玲、どうしたんだ? 目、開けたまま寝てるのか?」  肩を掴まれて、玲は唸るようにひと言呟いた。 「……俺を、殺してくれ」 「はい?」 「今から生命保険入る。バレないように殺してくれ。それで許してくれっ!」 「ちょっと待て。わかるように説明しろ」  玲は首を振り、殺してくれと繰り返した。落ち着けと、何度も拓馬が身体を揺さぶる。 「落ち着いて、わかるように話してくれ」 「ネックレス、落とした。探したけど見つからない」 「ええっ!」  「一生かかっても返せない。だからっ、今から入る生命保険で……」  全部を言い終わる前に、拓馬がグーで思い切り殴った。ゴンと寝不足気味の頭が鈍い音をたてる。 「バカか、おまえは」 「バカです」 「ほんとだな」  拓馬は鼻に皺をよせ、「保険ならネックレスにかけてある」と言った。 「え……?」 「そんなことで、自殺されたら生命保険会社に迷惑がかかるだろう」 「ネックレスに保険……?」
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