手違い

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手違い

「優華、駅まで送ろうか?」 大輝がそう言ってくれたのだが、私は首を振った。 「ううん大丈夫、まだ9時前だし…」 大輝は同じ学部の先輩で、付き合いだしてもう半年経つ。 彼と過ごす時間は、経つのがとても早く感じてしまう。 今日のように彼の部屋に来た時は帰りたくなくなるのだが 自宅通学の私には門限があった。 玄関でヒールを履き立ち上がると、私は大輝に向かって 少しあごをあげて目をつむる。すると彼が軽くキスをして くれる。これが私たちの”サヨナラ”の挨拶だった。 「じゃあ、また明日」 玄関の扉を閉め、通路を抜けて階段を下りた。2階建ての アパートを出て、狭い路地を少し急ぎ足で駅へと向かった。 何回も通っている道だが、今日はいつもより帰るのが遅い。 街灯はあるものの、辺りは真っ暗だった。
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