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「また義母さんとこ行くの?」
結婚してからも、柏木の伴侶は出かけることが多かった。
子供ができてからは実家に行くことも多く、柏木は一人暮らしと変わらないような気持であった。それでいてたまには家族で出かけても、と思うと妻は一人で旅に出かける。
何度か揉めたことがあった。
「いいじゃない、夜泣きしたり大変なのよ。あなたも気が休まるでしょ」
「そんな、家族一緒にいてこそだろ。俺だって子供と遊んだりしたいんだから」
「遊ぶだけじゃない。子育てを手伝ってくれないんだもの」
子供のいる手前、声を荒げたりすることはできずに柏木は言う。
「わかった、俺が悪かったよ、な、たまには家でゆっくりしようよ」
「もう母さんには話してるの。どいてよ」
「そうやって全部勝手に決めるのやめようぜ。な、子供のことだ、一緒に考えようよ」
「いいじゃない、私の子よ」
「じゃあ、俺はどうなんだよ」
「何言ってんのよ」
妻は鼻で笑った。
「あんたの子は、あんたが殺したじゃない」
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