気まぐれ

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 目の前のキラキラした瞳たちに素直に憧れる。俺が手放したものを全部持っている。  何となくセンチメンタルな気分になっていた、その時だった。 「遅くなりました!」  ドアが勢いよく開いて、飛び込んできた女性がいた。それがさやかさんだった。  第一印象はよく分からない。  とりあえずドアが急に開いてびっくりして、「誰この人?」状態だったから第一印象も何も特にない。国語の時間に習った「鉄砲玉みたいにとび込んできた」という表現が一瞬浮かんだ。そうか、こんな感じか。 「矢部さん、忙しいところ悪いね」  父の言葉に「いえいえ」とにっこり笑顔で答えて、大きめのリュックサックを部屋の隅に置く。ドサッと床に置く時に音がして、思ったよりも彼女が重いものを持っていたことに密かに驚く。  ・・・みたいな感じで、さやかさん本人に対して特にこれといった感情も感想もなかった。
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