気まぐれ

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「私も君をモデルにして絵を描きたい」 「え?」 「小学生のみんなが描いてるのを見たら、何か無性に描いてみたくなったの」  そう言いながら絵を描くための準備をテキパキと進めていく。俺の答えなんて聞いてないのに、どんどん進んでいく。 「はい、そこに座って・・・えと」  小学生の前でモデルをした時みたいに椅子を置いて、さやかさんがやっと動きを止めて、俺の方を見た。 「・・・田中くん?」  少しばかりの間があってから、さやかさんが控え目な声で俺の名前を呼んだ。初めてその時に、ちゃんと目が合った。 「うん、そうだよね。田中・・・田中だよね。田中だもんね。田中先生んちの息子さんだもんね」  一人でうんうんと納得するさやかさん。あまりの「田中」連呼に思わず少し笑ってしまった。
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