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「あ、笑った方が絶対いいよ」
俺の顔の変化を眺めながら、さやかさんは言う。初対面のさやかさん。普段の「無気力」とか「怖い」とか「仏頂面」とか言われている俺への先入観はない。ないからこその、一言なんだろう。
「そうですか」
「そうだよ」
「以後気をつけます」
「何それ。田中くん面白いね」
絶対にクラスの女子からは言われないような一言を言われて、ちょっとむず痒いような気分になる。それを誤魔化すように指定された場所に座る。さっきと同じように腕まくりをして、足を組んだ。確かこんな感じだった。これでいいのか確認をしようとさやかさんの方を見たら、すでに彼女はスケッチブックに向かっていて、手を動かしていた。
さっきまでとは明らかに違う表情。
あんなに朗らかそうに見えた彼女の周りがピンと張り詰めている。
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