気まぐれ

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 彼女の指はひんやりとしていて、それだけでも刺激になる。思わずゾクッとして、鳥肌が立った。多分そんなに長くない時間なんだろうけど、さやかさんに触れられていると時計の秒針の音がやけに大きく耳に響いた。 「ね、力抜いて?」  さやかさんの声が耳元で聞こえる。吐息が耳朶に当たって変な声が出そうになるけど、唇を噛んで堪える。 「肩の力」  さやかさんに言われて、スーっと意識的に息を吐く。  さやかさんの方を見ても、彼女の目は俺を見ていなかった。ただ、俺の肩と、首筋をジッと食い入るように見ていた。多分、目線で食われるとしたらこんな感じなんだろう。 「・・・よし、うん」  さやかさんが一人納得したように呟いて、スタスタと歩いて俺から離れたかと思うと、スケッチブックの方へと向かう。俺は何があったのかよく分からないまま、そっと力を抜く。
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