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母は父と同じく絵を描くのが好きで、時々作業に没頭する。父と違うのは没頭しすぎて、ご飯を食べ忘れたりトイレに行きそびれたりする。そして人が変わったかのような立ち振る舞い。小さい頃はそんな母が怖くて、自分の知らない姿が寂しかったけど今はもう平気だ。
「見てもいいですか」
ずっと合わない目線の中で、強い強い刺されるような視線の中でどんな風に俺が描かれたのか見てみたくて、普段絶対にしないようなお願いをしてみる。
「・・・え、どうぞ?」
少しためらったようなさやかさんの反応。さっきまでの迫りくるような視線ではない。不安げに揺れるその空気。
椅子から立ち上がって小学生の子どもたちが使っていた机の上に置かれたスケッチブックの方へと進んで行く。
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