気まぐれ

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 台の上を拭いてから、さやかさんは「他にお手伝いある?」と台所に立っている俺に声をかけてきた。炊飯器でそろそろ炊きあがるはずのご飯をよそうのと、箸の準備、マグカップの準備を頼む。  鼻歌交じりで準備しているさやかさん。今流行のラブソング。確かドラマの主題歌になっている。CMで流れているのをちょっと聞いたくらいなんだけど、少し音程が外れているのが俺にも分かった。そんなところが歳上なんだけど素直に可愛いと思う。でもそんな感情、顔には出さない。 「はい、出来ましたよ」  さっき洗ったばかりの汁茶碗を軽く拭いて、肉じゃがをよそって台の方へと向かう。さやかさんがちょこんと座って待っている。 「いただきまーす」  手を合わせて挨拶をして、さやかさんが美味しそうに肉じゃがを食べている。パクパク口に運ぶ姿に嬉しくなる。その姿の横で緑茶のティーパックをさやかさんの黄色のマグカップにセットして、沸かしたお湯を入れた。 「田中くんは食べないの?」 「・・・ご飯食べてきたんで」  田中くん。  クラスの女子から呼ばれるのと同じ。でもさやかさんに呼ばれるととてくすぐったくて、嬉しくなる。
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