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思い出せるのは、絵を描く時とそうじゃない時のギャップ。
力強い鉛筆の音。
憑依型の芸術家。
さやかさんに対してそんな印象しか強く残っていないため、目の前の通行人たちの波からさやかさん一人を探し出すのは正直絶望的だなと思った。
「・・・あ」
目の前にさやかさんが現れて、俺の方へと駆け寄ってきた。俺を見た瞬間、パアっと満面の笑顔。思い出した、こんなふうに笑う人だった。
「・・・ども」
「ごめんね、待った?」
「さっき来たばかりです」
軽く会釈して、ガムを噛みっ放しだったことに気付いてガムの包み紙をポケットから出す。慌ててそこにガムを口から出して包んでまたポケットにしまう。
「ガム噛んでたの?」
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