隙間

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「いやいや、田中先生のところに勝手に忘れてったの私だから!」  両手をブンブンと横に振るさやかさんの動きに合わせて、ダークブラウンの髪が揺れる。サラサラしたきれいな髪。髪を染めている辺り、大学生って感じがする。 「あ、そうだ何か・・・」  さやかさんが俺の方を見て何か言いかけたとき、変な音がした。さやかさんがお腹の辺りを手で押さえて、下を向く。 「・・・聞こえた?」  ちょっと恥ずかしそうに俺の方を見る。俺の方が身長が高いので自然と上目遣いになっている。「可愛らしい」に年齢って関係ないんだなと思った。 「お腹、空いてんですね」 「バイト先からダッシュしてきたから」  俺との待ち合わせのためにダッシュしてきたのかと思うとちょっと変な感じがする。待ち合わせ時間までには余裕があるのに。 「あ、これ食べます?」  カバンの中からレモンミント味のガムを取り出す。さやかさんの目が揺らいだ。お腹空いてるから欲しいんだろうなと思った。
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