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ガムを包みから出して、さやかさんがガムを噛む。思いの外美味しかったのか、「本当だ、美味しい。ありがとう」とニコッと笑ってくれた。
「あ、そうだ」
さやかさんがカバンから何かを取り出そうとする。でも見つからないらしく、「あれ、あれ?」と小さく呟いていた。その声が段々と不安そうな声音に変わる。
「何探してるんですか?」
「えと、田中先生のとこから間違えて・・・持ってきちゃった・・・クレヨン」
「クレヨン?」
「クレヨン」
さやかさんが俺の方を見た。不安そうで少し目が潤んでいる。
「また今度じゃだめなんですか?」
「絵画教室で使ってるやつだから・・・小さい子向けの教室って明日もあったよね?」
「あー・・・」
どうだろう。正直父の仕事のスケジュールまでは頭に入ってない俺は、微妙な声を出してしまった。
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