隙間

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 急にシリアスモードになったさやかさんに一瞬たじろぐ。重大な秘密を打ち明けられる前みたいな、雰囲気。 「『生きる力』が試されます・・・」 「『生きる力』?」  思わずさやかさんの言葉をオウム返ししてしまった。意味が分からないが、さやかさん本人は至って大真面目だ。よく分からないけど、「はあ、多分大丈夫です」なんて適当に言っておく。どうせクレヨン受け取るだけだし。 「ん・・・よし、じゃあ行こう」  ニコッと俺の方を見てからさやかさんが歩いていく。表情豊かだなと思いながら、その背中について行った。  さやかさんの家に向かいながら、さやかさんがクレヨンについて話してくれた。口の中に入れても安全なクレヨン。ミツロウという蜂の巣を作り出すときに作られる成分で、化粧品にも使われていることがあるらしい。それに野菜・果物由来の着色成分が入っているちょっと特別なクレヨン。  なるほど、と納得した。  クレヨンなんて適当にその辺のを使えばいいと思っていたけど、明日は絵画教室は特別支援学校に出張の日だ。父が何やら熱心に専門書をリビングで読んでいた。
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