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「な、何かすみません・・・」
まるで泥棒が入った後かのような部屋。さやかさんが本当に申し訳ないような声で謝ってくれるけど、とりあえず俺には「いや大丈夫です」と言う以外の選択肢はなかった。
まあ、正直びっくりしたけど。
テレビなどで時々出てくる「汚部屋」、もしくは「ゴミ屋敷」。まさかこの目で拝める日が来るなんて思わなかった。
なるほど確かに「生きる力」だと部屋に入る時に思った。どの隙間を進んでいけば一番安全か、そして自分の荷物を置くためにスペースをどうやって確保するか。常に考えて動かなければならない。
「いや、もう、本当に・・・すみません」
さやかさんの声がベッドから聞こえる。
6畳一間のフローリング。台所は一口コンロの小さなもの。トイレ・風呂別。俺がイメージする「大学生一人暮らし」の間取り通りの家。ちょっと違うのは、いろんなものが散乱しているというだけで。
「・・・あの」
この山の中からお目当ての「クレヨン」を探し出すのは厳しいような気がした。「部屋のどこかにある」という曖昧なヒント。捨ててないということなので絶対どこかにあるとは思うんだけど。
「ちょっと、ゴミをまとめてもいいですか」
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