溺れるレモン

気まぐれ

「大体今は３時ですからね」

「ふふふ」

「・・・食べ終わってから喋ってください」

　現在、土曜日の午後３時。さやかさんはこの時間に本日の1食目を食べている。お腹が空いて目が覚めることもある俺としては信じられない事実だ。前にそのことをさやかさんに言うと、「さすが育ち盛りの男子高校生」と言われて肩を叩かれた。

　下がまだ濡れている黄緑のマグカップを台所から持ってきて、自分用に緑茶を入れる。

「いつもありがとう」

「いいえ」

　お湯が緑茶の色に染まっていくのを眺める。さやかさんの家のマグカップ。多分この黄緑のマグカップは「誰か」の為に準備されたものだ。具体的に、もっと簡単に言ってしまえば少し前に別れた「元カレ」のものだ。でも他にマグカップがないので、仕方なく使っている。