隙間

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「ちょっと出てきます」  自分のポケットの中に財布があることを確認して、さやかさんに告げる。さやかさんがびっくりして俺の方を見てきたけど「本当に少しだけなので」とか何とかよく分からないことを言って、散乱しているものの隙間を縫いながら玄関まで行く。さやかさんが後ろから何か言っていたような気もするが完全に無視して玄関を開けて外に出る。  ダメだ。  記憶をたどる。近くにあったコンビニの場所を思い出して、少し早歩きでそこを目指す。「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」指定のゴミ袋と、待ち合わせの時にお腹が空いていたさやかさんを思い出しておにぎりでも・・・と思って財布の中と相談して焼きおにぎりの冷凍食品も一緒に買った。  さやかさんのアパートへと小走りで戻る。だんだんと日が暮れてきて、いや絶対そんなことにはならない自信はあるんだけど、早く彼女の家から帰りたかった。LINEで親に「帰り遅くなる」と一言送っておく。基本的に放任主義なので門限はないのだが、何となく、一応。宣言しておきたい気分だったのかもしれない。  さやかさんの部屋の前に立ってインターフォンを押す。するとガチャッと鍵が開いてさやかさんが出てきた。ちょっと不安そうに俺を見て「お帰りなさい・・・」と言ってくるあたり、ちょっと可愛いなと思ったけど、とにかく早く帰りたかったのでそんな感情は無視する。
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