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「ゴミ袋買ってきました」
中に入って玄関でスニーカーを脱ぎながらさやかさんに告げる。少し急いだので息が上がってしまいそうになるのを抑えようとしたら、ぶっきらぼうな言い方になってしまった。「無気力の田中くん」が定着しているクラスの女子にはまだしも、せっかく俺をそんなふうに見ないさやかさんに何か変な誤解を与えるのが嫌で言い訳みたいに誤魔化す。
「すみません、ちょっと走ってきました。息切れしてます」
「そ、それはそれは・・・」
玄関入ってすぐの台所の冷蔵庫に向かう。ちなみに冷蔵庫の前にもいろいろものが置かれていて、少ししか開かないようになっている。・・・絶対に生活するの、不便だろ。
「冷凍庫いいですか」
「どうぞ、でもすみません」と謝りながらも許可が出たので、冷凍庫を開けてみる。・・・と、何やらいろいろと入っていた。正確には詰め込まれていた。
多分さやかさん本人も把握していないような量の食べ物たち。何か白いビニール袋に入っているものもあれば、スーパーで並んでいるときと同じく白い食品トレーに乗ったままのもの。それらを少し(だいぶ)強引に端に寄せて買ってきた冷凍食品のためのスペースを確保する。これぞ、「生きる力」。
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