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干して取り込んだ洗濯物の山の下から発見された。
「あーよかったぁありがとう田中くんっ!」
本当に発見した途端、パアっと表情が明るくなったと思ったらさやかさんが俺に駆け寄ってきて、両手で掴まれて少し激しい握手をされた。全く予想していなかった動きにびっくりした。俺は目の前での満面の笑みのさやかさんにされるがままだ。
「あ、田中くん。あの、せ・・・」
さやかさんが何かを言いかけた時に、結構盛大なお腹の音が聞こえた。俺の腹からではない。多分、目の前にいる、耳まで一瞬で赤くなったさやかさんのお腹の音だ。
「・・・お腹、空きましたね」
「・・・・・・聞こえた?」
「まあ・・・少し?」
「うわぁ・・・」
握手していた両手を自分の頬に当てて、本当に恥ずかしそうにさやかさんが下を向いた。突然俺の手からなくなったさやかさんの温もり。もうちょい感じたかったなんて一瞬思った自分にびっくりした。
それは多分、いつも女子と触れ合う機会なんてないから。
「無気力な田中くん」に好き好んで絡んでくるクラスの女子なんていないから。
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