気まぐれ

7/25

71人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
 目の前には小学1〜3年生くらいの子どもたちが8人。キラキラした目で俺の方を見てきて、本当に居心地が悪い。どんな顔をしていいか分からなくて困っていたら、その中の一人が「このお兄ちゃん、怖い」と本当に小さな声で呟いたのが聞こえた。  思わず声の方に視線をやると、ビクッと細い肩を揺らしてみるみる瞳に不安の色が広がっていくのが分かった。 「このお兄ちゃんはね、怖くないよ」  父に肩にそっと手を置かれて、ふと我に返る。父の優しい声が続く。 「ちょっと視力が弱いんだよ。だからよく見ようとして、目つきが怖くなっちゃう」 「メガネかけたらいいのに」  至極真っ当な意見が小学生たちから出る。 「今日は先生が頼んでメガネを外してもらっているんだよ。今日はメガネを描く練習はしないからね」 「そっかぁ」  父の言葉に何か納得したみたいに、「視力が弱い」俺の方を見た。どうしていいか分からなくて軽く会釈をする。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加