満月

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表玄関前の自販機横に写真機がある。その横にベンチ椅子があり、座って待つこと15分。 黒い車がゆっくり手前の方に止まり、窓が開いて名前を呼ばれた。 「 舞弥!」 誰、どこ? 携帯片手に立ち上がり、自動ドア辺りを見回しているが誰もいない。 湊斗は、呼んでも気づかない舞弥に、車を降りて頭をコツンと軽く叩いた。 「 こら、舞弥って呼んでんだろ!気づけよ 」 「 …った!湊斗くん… あれ、どこから出てきたの?」 「 だから、呼んだろ。耳おかしい、ほら、乗って 」 さっき呼んだのって湊斗くん? うそ~ 気づかなかった。 車に乗ると、ふと呼ばれた事を思い返す。 私は気づいた。 湊斗が、私の名前を初めて呼んだと。
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