思い切なく

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志音が運転する車の後部座席で 私は揺れに合わせて耐えるまもなく眠りに落ちた。 運転する志音はミラー越しに私が眠っているのを見て笑みを浮かべ、巳來に教える。 「 あれ、寝ちゃってる 」 「 疲れてんだよな、休みなしでハードだよな… 有里さんがいるのといないのとじゃだいぶ違うし 」 「 舞弥ちゃんて、頑張り屋だよな 」 「 俺がバイトで入った頃から変わってないな 」 「 へぇ… なんかさ、甘えやすいよな?」 そう言う巳來に志音はすかさず言う。 「 お前は甘えんなよ!」 「 はぁ? 志音は美月さんいるだろ!」 二人は押し問答しながら舞弥が眠っていることを思い出したように 口をつぐむ。 大学は目の前に見えてきた。 駐車場に車を止めると、二人で後ろを振り返り舞弥を見る。 「 起こすのかわいそうだな… 」 志音がそう言うと、巳來は車から降りて舞弥の座る後部座席へ移る。 「 おい、巳來っ 」 「 舞弥ちゃん見てるから みんないるか見て来いよ 」 「 はぁ?なんで俺がっ …ったく、巳來 舞弥ちゃんに触るなよ!」 志音は渋々 他のメンバーが来ているか見に行った。 しばらくして、一台の車が横に止まる。 志音の車は後ろ窓はすべてスモークが貼ってあり 外からは見えない。 隣の車から降りる男女を見ていると、女は綾だったが 何かモメているようだった。 「 ケンカか?」 「 ん… 」 「 舞弥ちゃん? 起きた?」 返事がない舞弥を見ると 寝ている。 綾と連れの男が大学へと入っていくのを見てホッとする。 巳來の肩に舞弥が傾き体重がかかる。 巳來は舞弥の顔にかかる長い髪を手ですくと、トクン… 跳ねる心音。 無意識ではないが、引き込まれるように顔を覗くように首を舞弥へ傾けた。
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