たろうからうまれたたろうもも

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たろうからうまれたたろうもも

 むかしむかし。  といっても今から三十年前のお話です。  ばしょはげんていされると何かとこまるので、あるところに、としておきましょう。  じいさんと、ばあさんがすんでいました。  名前は、こちらもふせさせてください。  じいさんは山にしばかりに、ばあさんは川にせんたくにでかけました。  ばあさんが川でせんたくをしていると、川上からたらいに入ったものが、どんぶらこー、どんぶらことながれてきました。  ばあさんはこうきしんおうせいでしたので、さっそく川に入っていって、ながれてきたものをひろいました。  たらいの中みは、なんと赤んぼうでした。しかも、 「ふんぎゃー」  となくたびに、ぷりっとかわいいへをこくのです。  しかも、へといっしょに、しゃらららん、とかわいいももがうまれるのです。  ふんぎゃー、とないてはぷりっとへをこき、しゃらららんとももを生む。  ばあさんはたいそうおどろいて、このももに「たろうもも」と名をつけました。  そうそう、赤んぼうの名まえは、つきなみに「太郎」です。  太郎はすくすく大きくなりました。  太郎はあいかわらず、ももをたくさん生んでいましたが、そのほかとくにできることはありませんでした。  そのくせ、めしだけは一人まえいじょうにたべるのです。  じいさんとばあさんは、始めのころ、太郎のしりから生まれたももを食べてみようとしましたが、どうしても、しりから出ているのを目の当たりにしていたので、ていこうがあって、食べることができませんでした。 「それにさ、振ると変な音もするしね。体内から出たってのがどうも」  ばあさんはみもふたもありません。じいさんもためいきをつきます。 「せめて、米とか味噌醤油ならいいんだが」  ちょっと、ミソはかんべんして、とばあさんは心の中で思いました。  それはともかく。  太郎が十五さいになった時、じいさんばあさんは、太郎にこう言いました。 「太郎や、おまえも大きくなったので、そろそろ世間に出てみたらどうだろう」  ふたりがいつも食べるものにもこまっているのを見て、心苦しくなっていた太郎は、 「それでは」  とたびのしたくをして、家を出て行きました。
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