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学生鞄を肩にかけたとき、ふいに視線を感じることに気づいたカズオは、ベッドに横たわる妹、よしこへ振り返った。
「それじゃあ、行ってくるから。大人しく寝てろよ」
よしこは素直にこくりと頷いて、額の冷えピタに手をやると、残念そうに息をついた。
「学校行きたかったな…」
「仕方ないだろ、そんなに熱あるんだから」
「うん…でも、今日の給食、青りんごゼリーなのに」
「目当てはそれか」
カズオが目元をやわらげて笑うと、よしこは頬をふくらませた。
「だって…あんなにおいしいのに、たまにしか給食にでないんだよ?
貴重な日なのに休むことになるなんて、ショックだよ」
よしこのそばまでやってきたカズオは、赤ら顔の妹の頭を撫でた。
「よし、わかった。持って帰ってきてやる。だからそんなに落ち込むな」
「え!いいの?」
明るさを取り戻したよしこに、カズオはにかっと笑って白い歯を見せた。
「兄ちゃんに任せとけ」
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