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彼が楽園にいる間、私はここで彼と過ごす。
この寝室に朝が来てはいけない。
暴力的に暴き立てる光などいらない。
すべてが元通りになるまでの間、私はもう一人の彼と今を生きる。
Rを愛し夢を食み、そして何かを恨み呪いながら。
彼へと繋がるもう一つの楽園で、愛と呪詛の言葉を吐き続ける。
ああ、だけど。
いつまで、いつまで、いつまで私は待てばいいのか。
――『かってにころすな』。
困ったような笑い顔が私に訴える。
自分はまだどこかで生きていると認めさせたがっている。
私に、あの現実を知っているこの私に、僕のために狂ってくれと訴えている。
立ち上がり、ゆるゆるとカーテンを閉めた。
寝室は再び、常夜の楽園となる。
ここにいる限り彼と触れ合える。
私の体に、メッセージさえ残したりする。
けれど、やっぱり毎朝気付いてしまうのだ。
この部屋を出るたび、リビングで、電車で、街で、不動の現実を目の当たりにしながら、自分の憐れさを悟っている。
この関係を終わらせたくないという一心で、いじましいままごとを続けている。
だからこそ、私は、呪う。
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