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厳しい冬の寒さも過ぎ去り、祐樹たちは一つ学年を重ねた。薄い雲から柔らかな日差しが降り注ぐ穏やかな日、祐樹はある決心を持って待ち合わせ場所の駅前へと立った。 今日は、美幸に告白をする。
祐樹と美幸が出会って二か月、二人の距離は見違えるほど縮まった。通学時も毎日顔を合わせ、放課後も週に二、三度は帰路でばったり出会うのだった。最近では、特に約束をしているわけではないのに、美幸が校門前で待っていることが多々あった。祐樹を見つけると、背中まで伸びた黒い髪を振りながら小走りで近寄ってくる美幸を見る度、祐樹は自分の中にある恋心を再認識するのだった。
「すみません、待ちましたか」
祐樹が到着してから五分後、美幸も待ち合わせ場所に着いた。小走りで来たのだろうか、少しだけ肩で息をしている。
「ううん、全然待ってないよ」
初めて見る美幸の私服に、祐樹はつい見惚れそうになった。襟首のついた白いレースのインナーに、黒いジャンパースカートで身を包んだ美幸は、あどけない少女を内に秘めながらも落ち着いた上品さを醸し出していて、とても似合っていた。
「じゃあ行こうか」
まずは水族館、デートプランはしっかり頭に入っている。祐樹は美幸と並んで歩いた。
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