リンゴ男子×2を連れてお出掛け

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リンゴ男子×2を連れてお出掛け

久しぶりに一作、仕上げて編集さんに送ってみたら予想以上に反応がよかった。 突然のBLだったので戸惑われるかと思ったけど、最近、流行りですからね!いいと思います。とあっさり受け入れてくれた。 色々とオススメのBLも教えて頂いたので市場調査もしていかないとね。 編集さんは何よりもあたしのスランプは心配していたらしく涙声で安堵してくれて本当に申し訳ない気持ちになってしまう。 自分がいっぱいいっぱいだと周囲もよく見えなくなってしまうのだと実感して反省する。 とりあえず電話での打ち合わせを終えて、あたしは最近、住み着いた居候×2へと声をかけた。 「わー!人がたくさん!」 「動くな」 2人を連れてきたのは駅前の某大型ショッピングモールで主要駅であるここは観光客も訪れる場所で、 土日は特に盛況だった。 賑わう人混みに今にも走っていきそうな弟の首根っこをすぐに兄が捕まえていた。 さすが兄。面倒は任せよう。 「何だかんだで家事はやってもらってるしね、 服とか生活用品、必要なのや欲しいのあったら買いなよ。お金はあたしが出すから」 「え、でもお金を稼ぐって大変なんだよね?」 「俺達は平気だ。普通とは違うしな」 青リンゴと赤リンゴだと名乗る彼らは確かに人間とは異なって飲食が必要なわけではないらしい。 でも食べれないわけではないし、味にも好みがある。 弟なんて兄が作った料理を見てはヨダレ垂らしたり、この前なんてお腹をならしていた。 「男の買い物に付き合うなんて初めてだし、 こういうのもあたしの息抜きだから付き合ってよ」 「わかった!」 「なら…」 何だかんだで兄もショッピングモールに興味を持ったみたいで弟と一緒に興味津々で店を覗いていく。 寝落ちして起きたら2人も一緒にベッドで寝ていたときにはカナリ驚いたけどね。 あ、そうだ。ベッドを買わなきゃだ。 男2人から両側、挟まれて寝るとかどこのハーレムに迷い混んだかと…あ、なんかいいネタきそう。 急いでメモを取りつつ面白い雑貨に見て楽しそうにしている双子に声をかけた。 「ごめん、先にベッドを見に行こう! 自分で寝たいの選んでよ」 「ベッド?何で?」 「一緒に寝てはいけないのか?」 一瞬、騒がしい店内が静まった気がしたのは自意識過剰でしょうか?でも然り気無く近くのお客さんや店員からもチラチラ視線、向けられてるよ! 勘弁して下さい…。 「ベッドを用意するからそこで寝てください」 咳払いをしながら半ギレで言えば大人しく家具売り場についてきてくれた。 「すごい!ベッドってこんなにたくさん、あるんだ~」 「おい、寝転んだら…」 「ああ最近のは寝転んでみて大丈夫なやつ多いから。でもシーツとかに靴が触れないようにはしてね」 「はーい」 何だか小学校の先生にでもなった気分だ。 気に入ったのがあったのか、兄にも寝転べと弟がねだって2人で寝心地チェックとか兄弟じゃなくて夫夫かな?可愛くて写真撮ったら弟は気づいてピースしてきたので連写する。 ちなみにあたしが写真を撮りたいと思ったら自由に撮っていいと許可済みです。 「あの…お客様…」 写真撮影をしていたせいか悪ふざけをしていると思われたのだろう。 声をかけてきた店員に慌ててカードを出すと、これを下さいと言う。 ついでに枕とシーツ類も替えまで用意して貰ったら、 店員さんは配送の手配まで上機嫌で行ってくれた。 周り見えなくなるのはあたしの悪い癖だが、 少しヒヤヒヤしてしまった。 常に引きこもっていると、やっぱり他人と関わる機会が少ないし…いい大人が店員に注意されるとか精神ダメージ半端ないからね。回避できて良かった…。 ベッドと一緒にシーツ類も配送することになったので手ぶらで家具売り場を出ると次はメンズ服を見に行くことにする。 双子は自分のことには無頓着なくせにお互いのことになると真剣に服を選ぶので堪らない。 あ、こういう時の感情を尊いって表すんだっけ? 確かについつい拝みたくもなるのに納得してしまう。あとスポンサーとして双子に色ちがいお揃いのパジャマを買い与え着るように命じておく。 今夜の撮影会が非常に楽しみです。 「ふわ~疲れた!」 気づいたら大分、時間が経っていて休憩ついでにお茶でも飲もうと手近なカフェに入る。 当然のようにテラス席に案内されたのは双子の見目麗しさからだと推測した。 配送する程ではない荷物は自分たちで持って帰ると双子が言ったので2人でわけあって荷物を持ってくれた。あたしも持とうとはしたのだけど軽い物すら取り上げられて、そんな感じの場面を幾らでも小説で書いてきているというのに普通にときめいてしまったよね…リアルは違うわ…。 カフェで人気のケーキセットをあたしと弟で注文して、兄はコーヒーとスコーンを。 兄も甘いものは嫌いじゃないけど弟がスコーンも食べたいって言ったからそうしたらしい。 この双子、何回あたしを殺そうとしてくるんだろうか。 「はい、あーん!」 にっこり笑顔でケーキを口元に持って来られ反射で食べてしまう。 「そっちも食べさせて~」 「ああ…はい」 呆気にとられながらも言われるままに今度は自分のケーキを弟へと食べさせる。 弟パワーすごいな…つい言うことを聞いてしまうよ。 「口を開けろ」 そう思っていたら今度は兄の方から一口サイズに千切ったスコーンを食べさせられた。 漫画じゃないけど漫画並みに周りの女子達がこの双子に落とされたのが見えた気がする…。 「今日はありがとう!すごく楽しかったよ」 「ああ、楽しかったな」 弟の常に殺人級のアイドルスマイルに、 兄の滅多に見せない微笑みも3分の2くらいは引きこもって生きているあたしが直視してはいけないものでした。この2人、本当はあたしを殺すためにやってきた暗殺者なのでは?と真剣に思ってしまう。 ……頑張って働かないとね。 「さて帰りますか」 「うん!」 「そうだな」 突然、始まった非日常のはずが、いつの間にかあたしの日常になっていく。 おかしいはずのこの日常があたしは楽しくて堪らなくなっていた。
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