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「...なんやねんそれ、もどかしい」
『もどかしいて...』
洗濯物を洗いながら昨日の夜の事を梅ちゃんに話すと眉間な皺を寄せてそう言った。
ふぅとため息をつく。
(沖田隊長とはまた距離ができちゃったなぁ。ただでさえ稽古をつけてもらうってだけで機嫌が悪かったのに...)
「沖田はん、良かったらお昼どうですか?余ってた物で作ってみたんですけども...」
ぴくりと思わず反応してしまう。
声のする方を見ると笑顔の紅葉さんが沖田隊長に話しかけていた。
「…あぁ、ありがとうございます」
(...なんで満更じゃなさそうなのよ!!ハルさんに一途なんじゃないの!?)
勝手に嫉妬して勝手に怒っていると無意識に力を込めていたのか、ばしゃりと桶の中の水が跳ねてお腹ら辺にかかった。
「あちゃあ」
『つめた...』
「お腹は冷やしちゃあかんよ。着替えといで」
『そうする…』
梅ちゃんのお言葉に甘えて立ち上がって部屋へ向かう。
このまま沖田隊長とすれ違いの日々を過ごすなんて嫌だ。
やっぱり謝りに行こう。
(…洗濯終わったら、甘味処行くかぁ…)
蔵に入り、箪笥から袴を取り出す。
この袴も、私に初の給金が出た時に沖田隊長と一緒に買いに行ったものだ。
思い出して思わずクスリとしてしまう。
私の周りは沖田隊長にまみれてるなぁ、なんて。
しゅるりと帯を解いて新しく着替える。
慣れた手つきで帯をまた結んでいけばすぐに着替え終わった。
(このままじゃ良くない。ちゃんとしなきゃ)
ぱしりと頬を叩いて気合を入れる。
池田屋事件まであと半年。
それまでにはこの関係をどうにかしよう。
「…羽唯ちゃん、空回りしないとええなぁ…」
お梅は沖田を見てそうぽつりと呟いた。
(…紅葉はんや羽唯ちゃんみたいに鈍臭い子にはわからんかもしれんけど、沖田はんは羽唯ちゃん以外の女には近付くなって圧すごいなぁ)
「沖田はん、素直にならんとあかんよ」
その言葉が沖田に届いていたかは本人のみぞ知る。
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