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浮遊感が体を襲う。
恐る恐る目を開くと、そこは真っ暗な空間だった。
…え?どうなってるの?
頭の中が?マークでいっぱいになっていると、ある女の人の声が聞こえた。
「お願い…精霊達を助けて…」
透き通るような声がこの空間に響く。
精霊…?どういうこと?全く意味がわからない。
「幕末の時代の精霊を助けられるのは愛し子の貴方だけなの…お願い…!」
幕末???愛し子??私が?
『姿を見せて。話はそれからよ』
私は暗闇にそう話しかけると
「ごめんなさい、私にはもう力が残ってないの…どうか、よろしくお願いします」
と声が聞こえた。
いや、良いよって言ってない気が…と呑気に思っていると一気に視界が反転し
次の瞬間には目の前に満点の青空が広がっていた。
そして下から吹き込む風。未だに残っている浮遊感。
理解するのに時間が掛かったがこれは信じられない。…いや、信じるしかないけど
『なんで私空から落ちてるのぉおおお!?!?』
ばか!ばか!さっきの女性のばか!どうなってるのよ!
もうだめだこのまま落ちて死ぬ!!
手で顔を覆っていると
「羽唯!起きて!」
と幼い声が聞こえた。
『え?』
声がする方向を見ると長い銀髪をした小人が私に話しかけてきていた。
か、かわいい…!!
小人は焦ったように
「下!下!」
と叫び続けるので下を見ると
近付いた地面。
このスピードのまま落ちたらお陀仏になるのは目に見える。
『っきゃぁぁあー!!!』
奇声にも近い悲鳴をあげて固まってしまう。怖い怖い!死にたくないぃ!
「風を操るの!早く!」
『操れないよそんなの!!』
「羽唯なら大丈夫!早く!」
ええええ!!無茶ぶり!
風を操るって魔法使いじゃないんだから無理に決まってる。
でも、もしかしたらどうにかなるかもしれない。
いや、なってくれ。(願望)
『風よ落ちるスピードを落としてぇえ!!』
涙声でそう叫んだが地面まであと数メートル。終わった。
バタバタと手足を動かして少しでも空気抵抗を増やそうとしていると
「動かないでください!!」
下から声が聞こえた。
そしてどさりと誰かに受け止められる感覚。
『…え?た、助かった…?』
涙目で受け止めてくれた物を見るとそれは中性的な顔立ちをした綺麗な男性で。
助けて、くれたんだ。
そう思うのと同時に助かったという安心感から私は気を失ってしまった。
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