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女だと発覚すると拘束を解いてもらえて、幹部が集まった部屋に連れてこられた。
私が正座で座っているところの正面にごつい体育系なお方がおり、その周りに何人か男性がいて、さっきの土方さん?もいた。
「まずは名前を聞いてもいいかな?」
ごついお方に見た目と反した優しい声色で聞かれたので私は少し安心しながら
『一ノ瀬 羽唯です。…あの、えっとなんで私はここに…』
と聞いた。すると私を助けてくれたあの男性が
「私が連れてきました。事情を聞こうとすると気を失うものですから。
髪も男っぽいし服装も女性なら遊女でもそんな足を出して破廉恥な格好はしませんし。それになんですかその珍妙な服は。見たことないです」
と冷たい目で睨みながら言ってきた。
な、なんかめっちゃ棘ある言い方だな…
江戸時代の女性はポニーテールはせずに髪は結っていたらしいしポニーテールと丁髷が男性の髪型だったのだとか。
そして足も現代みたいに肌を晒すことは無く、脛を出すことすら破廉恥だったそう。
私は至って普通な制服を着ていて半袖のワイシャツに膝より少し上のスカート。
…まあ確かにこの時代の人から見たら異様なんだろうな。
『この格好は私の住んでいた所では普通で』
「あ?ならお前の住んでいた所っていうのはなんて言うところなんだよ。言ってみろ」
(んなっ!!)
土方さんの予想外の突っ込みに私は少し動揺してしまう。
現代では東京に住んでいたのだが、江戸時代の時はまだ江戸という名前だ。
江戸と言っても土方さんは江戸から出てきた方なので嘘だと思われてしまう。
…どうしよう。
悩んでいるとごついお方が助け舟を出してくれた。
「まあまあ、トシ。そうかっかするなよ。…すまんね、羽唯くん。私はこの壬生浪士組の局長、近藤勇だ。」
…近藤勇ぃぃぃぃぃ!?!?
あの有名な!?
「そこにいるのが手前から1番組組長、沖田総司。」
そう言って近藤さんが目で合図した人は私を助けてくれたあの男性で。
まさかの私沖田総司に助けられたの?
偉人に助けてもらえるなんて嬉しすぎるけど、なんだか複雑…
「2番組組長、永倉新八。3番組組長、斎藤一。6番組組長、井上源三郎。
8番組組長、藤堂平助。10番組組長、原田左之助だ。」
うわぁぁ…有名なお方達がここに集まってる。私なんだか物凄い経験をしてるのでは…?
「そして俺の隣にいるのが壬生浪士組副局長、土方歳三だ。」
そう言うと私に散々怒鳴ってきた男性の肩を叩いた。
やっぱりこの人が土方歳三か。私の予想はあっていたみたいだ。
さっきの話なんだがどこから来たか教えて貰えないか?と近藤さんは優しい笑顔でいう。
…本当の事を、言うしかないよね。
『私は東京という所から来ました。本当にどうしてここに来たのか分からなくて…いつも通りに歩いていたら転んでしまって。気付いたら空の上にいたんです。』
私がいたところは今は夏の終わり頃だったからこんなに薄着でいると言うと皆驚いた顔をした。
さっき土方さんに日付を聞いた時、確か4月10日と言っていた。
いくら春だからと言ってもこの格好は寒すぎる。今だって震えるくらいだ。
「確かに、この季節にそんな薄着で出かける人はいないな…狐にでも化かされたのだろう。この子はきっと私達とは住んでいる世界が違うように感じるんだが…どうかな?」
『私も、そう感じます。ここの人と私が住んでいた所の人とは何もかもが違いすぎます』
簡単に信じてくれて嬉しい反面、そんな哀れな目で見られるとなんか騙している気分。
ごめんなさい。と心の中で謝る。
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