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corny
-夕陽に背を当て、やっと見つけた 帰ってきた場所 ここが私の居場所だと
唇重ね 瞼差し込むオレンジへと 告げる言葉 私にサヨナラを
Bメロを思い出しながら海岸沿いの階段を下りて、砂浜を歩いた。幸せの時間がAメロなら、サヨナラされた今はBメロだ。サヨナラすら言われていないのが余計に辛い。
テトラポッドに背を預けて、夕陽を見ながら一年間で紡いだ軌跡を脳の中で辿った。思い返すほど胸が詰まって、大事なものをたくさんくれたんだなとつくづく思う。
でも、感謝よりも悔しさが上回って、いつまで経っても涙が止まらない。
夕陽が過ぎて夜の帳が降り、潮が満ちて下半身が波に呑まれてもどうでもよかった。夏日に震えるほどの寒さを覚えても、やけっぱちな思いに駆られてそのままうずくまった。
どれ程の時間が過ぎたんだろう。
最後に見た景色は月の光が海面を照らした姿だった。どこかのタイミングで疲れ果てて意識が飛んだみたいだ。
まどろみながら開けようとした目に陽光が入り込む。潮は引いてるけど胸元や足元は凍える寒さだ。なのに背中だけは不思議とあったかさも感じられる。
ぎーんと調子の外れた音が、俺の両目を完全に開かせた。
「やっと起きた?」
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