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父は、おおいに食べ、飲み、笑った。
元々、酒に弱い人だ。
バースデーケーキが登場した頃には、上機嫌でシャンパングラスを傾けていた。
「お父さん。酔い冷ましに、少し外を歩かない?」
私はさりげなく父と腕を組み、店を出る。
ショーウィンドウに映る、私と父。
飾られたマネキンと同じく、仲睦まじい一組の男女。
すれ違う他の恋人達にも、なんら引けを取らない。
下界を見守る月が、私達を包み込む。
母には、燻った陰しか与えなかった月が。
私と父には、煌々と輝く祝福の光を与える。
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