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「◯◯さんは、“愛情過敏花弁症”です」
聞き慣れない言葉に、耳を疑う。
しかし、医者は真剣な顔をしたまま、レントゲン写真へ向き直る。
「心臓の中央に、黒い影があるのが見えますか。これは“種”です。愛情を糧に成長します。蔓が心臓から少しずつ伸び、締めつけていきます。
開花時期を迎えた時。つまり最期の瞬間は、胸肉を突き破り、花を咲かせます」
「……愛情というのは、誰からの、どの程度のものを指すのでしょうか」
「人によって、としか言えません。特定の個人の場合もあれば。不特定多数の場合もあります。一目惚れから、長年連れ添う夫婦のようなものまで。◯◯さんが、愛情と認識したもの。それが、種の育成を促進させると考えて下さい」
「……治療法は、あるのでしょうか」
「正直申し上げまして、これといった治療法は確立されていません。自然に生えている植物と違い、除草剤のような特効薬もありません。
何が◯◯さんの愛情と感じるのか、なるべく早急に見つける事。そして、それを完全に遮断した生活を送る事。延命処置として僕から申し上げられるのは、以上です」
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