episode257 毒が回る時

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「いいよ。けどどっちに?なんて言うの?」 開き直って聞きながら 僕は折り目正しいハンカチの角を頬に滑らせる。 「和樹が寝ぼけて庭の花を食らうって?なんだそりゃって鼻で笑われるのがオチだよ」 「笑ってられりゃあいいがな」 鳶色の危い瞳がいくらかしっかりしてきたのは 他でもない――僕が壊れ役を担ったからではないかと思う。 「薫お兄様、ご心配はありがたいですけど――僕、自分で言いますよ」 「へえ。でどっちに?」 はなから信じていない様子で 薫は胸元から取り出した煙草に火をつけた。 一筋紫煙をくゆらせる間。 僕らは無言で見つめ合う。 「薫お兄様——やり辛いなあと思ってる?」 「何が?」 口角が下がる。 煙を吐き出すためじゃない。 「2人きりになることさ。一度でも僕と寝たから」 僕の言わんとしていることが分かっているから。
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