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夕飯は諦めて庭に出た。
もともとそんなに空腹だったわけでもない。
僕は知りたかった。
満たされている自分がなぜ夜な夜な花を食らうのか。
天宮家の庭は広大でさながら植物園のように
至る所あらゆる種類の花々が咲き誇っている。
「ありがたいことだよ。なあ?」
草食動物になった僕にとっては格好のえさ場だ。
「僕に食われるならおまえたちも本望だろう?」
僕は皮肉交じり名も知らぬ花に語りかけ
心地よい夜風に揺れる草花の音を聞く。
気分は悪くなかった。
このところ距離ができたせいか。
それとも二人が申し合わせているせいか。
九条さんと征司が火花を散らすこともない。
「なあ、おまえたち——僕はね、愛されてるんだ。とても」
風にそよぐ木の葉たちを見上げて自慢げに口にした。
「ただの男じゃない。最高の男2人にさ——」
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