episode257 毒が回る時

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美しい夜。 誰もいない。 月もなく星もない。 とても儚く静かな夜だ。 「ああ、だけどもっと愛されたい……」 それでも若く青い血が滾る。 太い木の幹に手をつくと 共鳴して僕の中までドクドクと脈打つようだ。 虚しさは頭を混乱させた。 なぜだ? 若さと美しさ。 特別な男2人分の愛。 手に余るほどの贅沢。 永遠に思えるほどの自由な時間。 僕に足りないものなんて何もないはずなのに——。 僕の心は今夜のような深い闇に沈み 決して浮かび上がってはこない。 鬱とも違う。 僕は幸せなんだ。 だけど僕は——。 「きっと今夜もおまえたちを食いに来るよ、きっときっとね」 僕はただ——気難しく渇望している。
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