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美しい夜。
誰もいない。
月もなく星もない。
とても儚く静かな夜だ。
「ああ、だけどもっと愛されたい……」
それでも若く青い血が滾る。
太い木の幹に手をつくと
共鳴して僕の中までドクドクと脈打つようだ。
虚しさは頭を混乱させた。
なぜだ?
若さと美しさ。
特別な男2人分の愛。
手に余るほどの贅沢。
永遠に思えるほどの自由な時間。
僕に足りないものなんて何もないはずなのに——。
僕の心は今夜のような深い闇に沈み
決して浮かび上がってはこない。
鬱とも違う。
僕は幸せなんだ。
だけど僕は——。
「きっと今夜もおまえたちを食いに来るよ、きっときっとね」
僕はただ——気難しく渇望している。
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