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保留音を鳴らされたままだいぶ待つ。
長いこと待たせておけば
タチの悪い義弟が諦めて受話器を置くとでも?
「そうはいくか」
王様のとっておきのワインは美味だった。
少なくとも庭の葉っぱや花よりは。
熟成された2杯目のワインをグラスに注いで回す頃。
馬鹿らしいくらいお上品な保留音が止んで
「——もしもし」
「ハーイ。閉園後の動物園に孔雀の羽でも毟りに行こうと思うんだけど一緒にどう?」
「どちらにおかけですか?お客様」
「ん?」
「こちらはインペリアルホテルの会長室ですが」
九条敬ではない。
もっと年のいった渋い声が単純に驚きを隠せない様子で言った。
「会長室……」
その一言で。
ぼんやりした頭が見たことのある紳士の顔を思い描く。
と同時に受話器の向こう——。
「お父様!……その電話僕にですっ……」
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