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「まずい……」
中川が戻る前に僕は裸足のまま裏庭を突っ切って
螺旋階段を駆け上がった。
ガウンの裾に絡んだ花弁や枯れ葉が所々
赤い絨毯を汚す。
僕は慌てて自室の前を通り過ぎる。
花を食らう直前までの事を思い出したからだ。
微睡み——。
そうだ。
今日は自分のベッドで寝ていたんじゃない。
珍しく昼過ぎに屋敷に戻った征司に誘われるがまま。
僕らはランチ代わりに真昼の情事を楽しんだ後だった。
そっと征司の部屋の扉を開ける。
足を拭いベッドルームを覗き込むと。
「どこへ行ってた?」
まずい――。
薄暗い微睡みのあちら側から
手招きして気だるげな声が聞いた。
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