episode257 毒が回る時

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「言いたいのはそれだけ?」 薄く微笑む唇と目尻の細い笑い皴。 ごく淡いピンクの薔薇のような頬の血色。 目の前にいなくても分かる。 彼がどんな顔して僕の言葉を聞いているか。 好きな女の子に突然微笑みかけられた 10歳の少年みたいな顔——。 足音――。 「もう切るよ」 「どうした急に?」 「気まぐれなの。知ってるでしょ」 電話口に口づけて僕は慌てて受話器を置く。 そしてグラスのワインを空にして ワインボトルと一緒にカーテンの影に隠した。 あとは近づいてくる足音に負けじと。 部屋の灯りを消して駆け出した。 それでちょうど——。
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