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「言いたいのはそれだけ?」
薄く微笑む唇と目尻の細い笑い皴。
ごく淡いピンクの薔薇のような頬の血色。
目の前にいなくても分かる。
彼がどんな顔して僕の言葉を聞いているか。
好きな女の子に突然微笑みかけられた
10歳の少年みたいな顔——。
足音――。
「もう切るよ」
「どうした急に?」
「気まぐれなの。知ってるでしょ」
電話口に口づけて僕は慌てて受話器を置く。
そしてグラスのワインを空にして
ワインボトルと一緒にカーテンの影に隠した。
あとは近づいてくる足音に負けじと。
部屋の灯りを消して駆け出した。
それでちょうど——。
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