episode257 毒が回る時

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「ンッ……いやぁ……」 部屋に連れ戻された僕は当然。 「こそこそと鼠みたいに人のワインセラーを漁ったのか」 大昔のワインを空けて カーテンの影に隠したかどで罰せられる。 「ンッ……」 カーペットにひざまづいたまま 前髪を掴まれ口移しにもう一杯。 「零すなよ。ン百万だ――」 征司はビンから直に煽るともう一度 鼻で笑って僕の唇に流し込む。 「やだ……もう無理……」 血を吸い損ねたヴァンパイアのように 赤黒いワインが僕の口端を流れ白いシャツの襟元を穢す。 それが面白いんだ。 今度は全く飲み込めないのを分かっていて。 「美味しいだろ?特別なシャトー・マルゴーだ」 もう一口注ぎ込んだ。 「ケホッ……!」 僕は完全に咽返り今度はシャツの胸元まで赤く染める。 「おやおや和樹は——いい年してよだれかけが必要なのか」 征司は前髪を巻き上げるように 情けない僕の顔をもっと上げさせると。 「ほら、赤ん坊は指でもしゃぶってな」 ワインの代わりに次は己の指先を含ませた。
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