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「ンッ……いやぁ……」
部屋に連れ戻された僕は当然。
「こそこそと鼠みたいに人のワインセラーを漁ったのか」
大昔のワインを空けて
カーテンの影に隠したかどで罰せられる。
「ンッ……」
カーペットにひざまづいたまま
前髪を掴まれ口移しにもう一杯。
「零すなよ。ン百万だ――」
征司はビンから直に煽るともう一度
鼻で笑って僕の唇に流し込む。
「やだ……もう無理……」
血を吸い損ねたヴァンパイアのように
赤黒いワインが僕の口端を流れ白いシャツの襟元を穢す。
それが面白いんだ。
今度は全く飲み込めないのを分かっていて。
「美味しいだろ?特別なシャトー・マルゴーだ」
もう一口注ぎ込んだ。
「ケホッ……!」
僕は完全に咽返り今度はシャツの胸元まで赤く染める。
「おやおや和樹は——いい年してよだれかけが必要なのか」
征司は前髪を巻き上げるように
情けない僕の顔をもっと上げさせると。
「ほら、赤ん坊は指でもしゃぶってな」
ワインの代わりに次は己の指先を含ませた。
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