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僕の瞳には夜の庭は果樹園だった。
暗黒の実のなる木々。
芳しい蜜の香り。
裸足で芝を踏むのも
半裸の身体に夜風を受けるのも
原姿に戻ったような安心感とまた
心地よい危機を孕んで僕を突き動かした。
僕は若く青い実を探し求めていた。
熟れたものではなく
まだ誰も触れたことのない固い実。
でも見つからないから手あたり次第毟り
食してみる。
これも違う。
あれも違う。
甘いのも
柔らかいのも
僕の求めるモノとは違う。
だからと言って渋いのも
口内を傷つけるほど棘があるのも
僕の求めるモノとは違った。
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