episode257 毒が回る時

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いくら食べても満たされない。 美しいもの。 美味しいもの。 高価なもの。 みんな。 食べれば食べるだけ僕は渇き 虚ろに闇をさまよい続けた。 『もうとっくにたくさんあげただろう?』 と白い薔薇になった九条さん悲し気に僕に囁く。 『そうさ。おまえの求めた通りじゃないか』 赤い薔薇になった征司も困り顔で僕を窘める。 「違うの……僕が欲しいのは……違うの……」 両方の花弁を口から溢れさせ 僕は冷たい土の上に膝をついた。 「たくさんあるけど……違う……」 そうさ、まるで僕自身が。 水も栄養もたくさん与えられ過ぎて 挙句沈んでゆく薔薇のように——。 このままじゃ あとは朽ちるのを待つだけだった。
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