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いくら食べても満たされない。
美しいもの。
美味しいもの。
高価なもの。
みんな。
食べれば食べるだけ僕は渇き
虚ろに闇をさまよい続けた。
『もうとっくにたくさんあげただろう?』
と白い薔薇になった九条さん悲し気に僕に囁く。
『そうさ。おまえの求めた通りじゃないか』
赤い薔薇になった征司も困り顔で僕を窘める。
「違うの……僕が欲しいのは……違うの……」
両方の花弁を口から溢れさせ
僕は冷たい土の上に膝をついた。
「たくさんあるけど……違う……」
そうさ、まるで僕自身が。
水も栄養もたくさん与えられ過ぎて
挙句沈んでゆく薔薇のように——。
このままじゃ
あとは朽ちるのを待つだけだった。
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