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そんな時だった。
「欲しいモノならここにあるよ」
小さなランタンの光が
ゆらゆらとそう遠くない場所で揺れていた。
僕はついに来たと思った。
ずっと求めていたもの。
ずっと探していたものの匂いがした。
「さあ、こっち」
導かれるまま裸足で芝を踏んで立ち上がった。
「転ばないで」
命じるように声は言った。
僕は素直に頷いて出来るだけ背筋を伸ばし真っ直ぐそちらに向かった。
嫌われたら大変だもの。
やっと見つけたのに——。
人魂のようにぽっかり浮かんだランタンの灯りに
すぐ触れられそうなほど近づいた時。
「そう、いい子」
僕を見据える黒い瞳は
獲物を狙う猫みたいに光っていた。
その瞳に悪気はないんだ。
ただ獲物がいたら狩るという本能に基づいて
その瞳は鮮やかに残酷に光っているんだ。
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