episode257 毒が回る時

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「これが欲しいの?」 差し出される白い花はぼやけている。 それでも僕は何度も頷いた。 それが僕が本能で欲するものだと知っていたからだ。 「ほうら」 悪戯な笑い声が 僕を釣るみたいに白い花の束を上下に動かす。 「ンンッ……ンンッ……!」 僕は夢中で手を伸ばした。 赤ん坊のように涎を垂らし 今にも泣き出さんばかりに欲した。 「フフフ、和樹って可笑しい……!」 笑い声は甲高く大きくなった。 子供の頃から知ってる。 この笑い声が屋敷に満ちるのは——。 邪魔な大人を世界の外に追い出す時。 ゲームに負けた者に盛大な罰を下す時。 そして——思い通り純粋な悪意が遂行される時だ。 「さあ、召し上がれ」 僕は白い花の束を捕まえた。 小さくて愛らしい鈴蘭の花束だ。
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