43人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
僕は鈴なりの小さな白い花を
赤い唇に運び迷いなく貪った。
「では、ごきげんよう」
それを見届けて
ランタンの灯りが離れてゆく。
この時、やっと分かったんだ。
僕が欲していたのは純粋な愛ではなかった。
僕が求めていたのは致死量の毒だった。
愛と毒——それは僕の中では恐ろしいほどに同意だ。
お母さん——。
僕はあなたに操られていたんじゃない。
お母さん——。
あなたを飲み込んで成長したのは僕の方だ。
沈みゆく意識の中で母が優しく微笑んだ。
あとはズブズブとくずおれ失われていった。
天宮和樹はこうして没した。
誰にも看取られず
庭の片隅で
自ずから毒を食らって——。
愛の為に。
愛の為に——?
最初のコメントを投稿しよう!