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「いいでしょ別に——。最近裸足が好きなんです」
薫の視線をやり過ごしながら
僕は自分でも腹の立つほど間の抜けた声で言う。
「まあね。あんたは元々野蛮な家の出だし——」
「お嬢様!」
中川がまた始まるとばかり間に割って入った。
僕も黙っていれば良かった。
だけど――。
「うるさいな。女狐」
僕も普通じゃなかった。
「何ですって!」
「やめろよ」
女王様の金切り声に薫が頭を抱える。
パイ包みを割った。
濃厚なソースと一緒に中から肉汁が溢れ出す。
白い皿にゆっくりと広がる
花の模様みたいに——。
「あはははは!うんざりだ!」
笑いながらナイフとフォークを叩きつけた。
「和樹坊ちゃま……!」
皿が割れそうな音がして中川が叫んだ。
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