episode257 毒が回る時

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「そんなこと——」 「あの2人はまだ知らないんだろう?」 僕の言葉尻に被せて薫は眉を顰める。 「知ってたら放っておくはずないものな」 ああ、もっともだ。 思う存分愛情をむしり取っているのに 夜毎花食らう妖魔のような弟を——。 知っていたら あの人たちが放っておくはずないものな。 「別に……隠してるわけじゃないよ」 僕は冷静さを取り戻すべく蛇口を捻り 洗面台に顔を突っ込むようにして冷水で顔を洗った。 「おまえが黙っているなら俺から言う」 「……え?」 紳士らしく白いハンカチを差し出しながら 「俺が言うのもなんだが――おまえ、相当キテると思うぞ」 薫は真っ直ぐに僕の瞳を見て言った。
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