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「そんなこと——」
「あの2人はまだ知らないんだろう?」
僕の言葉尻に被せて薫は眉を顰める。
「知ってたら放っておくはずないものな」
ああ、もっともだ。
思う存分愛情をむしり取っているのに
夜毎花食らう妖魔のような弟を——。
知っていたら
あの人たちが放っておくはずないものな。
「別に……隠してるわけじゃないよ」
僕は冷静さを取り戻すべく蛇口を捻り
洗面台に顔を突っ込むようにして冷水で顔を洗った。
「おまえが黙っているなら俺から言う」
「……え?」
紳士らしく白いハンカチを差し出しながら
「俺が言うのもなんだが――おまえ、相当キテると思うぞ」
薫は真っ直ぐに僕の瞳を見て言った。
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