僕はいなくならなければならなかった

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「お約束、覚えていますよね?」  彼女は不敵な笑みを浮かべて突然子供の頃の話をしだした。話を合わせる気分になれない僕は、 「ああ、子供の約束だろ?」  と、ぶっきらぼうに返した。すると、となりの男が 「いいえ、契約は成立しております」  と言って、一枚の古い紙切れを差し出した。それは子供の頃に血のついた小指をつけた紙……。そこには 『貴女の従者となることに異議はありません』と書かれていた。 「なっ……!」  と、絶句した僕に彼女が続ける。 「ふふ。あの友達は、みんな私の仲間です。よくぞだまされずにここまで来ましたね。私の与えた課題を見事にクリアしたあなたには、約束どおり私の従者……、まあ、人間の言葉で言えばブレーンになっていただきます。一緒に世界を思うがままにしましょう」  そう言った彼女の背中には黒い羽が生えていた。周りには友達だった人たちがいつのまにか現れていた。そういうことだったのか……。不思議と逃げる気にはならなかった。 ――この世から、彼はいなくなった。この後、ミドリと従者たちはどういう訳か世界を救うことになってしまうのだが、それはまた別のお話。
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