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二人で話していると、ゆるい風と一緒に程よいバニラのような甘い香りが乗ってくる。
「おはよー権代くん」
「あ、美玲姉さんおはようございます」
今日も彼女は綺麗に巻いた髪をそよがせていた。30代前後だろう、紗和にはない落ち着いた色気がある。
——権代さんと仲良い人、邪魔しちゃ悪いよね。
紗和が立ち去ろうとすると、美玲は彼女の方を向き、目線が合うように少し屈むと優しく微笑んだ。
「初めまして。貴女、最近たまに権代くんと一緒にいるよね」
「あ、はい総務の北村です」
「かわいい! なんかちっちゃくてハムスターっぽい!」
美玲姉さんはニコニコしながら彼女を眺めている。オトナの紗和としてはハムスターに見えるのは悲しいが、家川の「かわいい」と違って素直に解釈して良さそうだ。
「きょ、恐縮です」
「やーん、この子めっちゃかわいー!」
美玲が紗和の頭を撫で始めると、権代が「ちょっと」と文句を言う。
「いーじゃん女同士なんだから。じゃ、またね。北村さん!」
彼女が嵐のように去っていくと、権代は「女はいいよな」と小さくボヤいた。
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